「ルーディーボール エピソード1 シュタードの伯爵」(斉藤洋)

ルーディーボール エピソード1 シュタードの伯爵

ルーディーボール エピソード1 シュタードの伯爵

 斉藤洋デビュー20周年記念ということで、重厚そうな長編ファンタジーシリーズが開幕しました。
 舞台は様々な獣の顔を持つ人間が住んでいる惑星ルーディーボール。主人公は荷馬車をおそって生計を立てている猫顔のラックス、兎顔のバーサル、犬顔のインギークスの小悪党三人組です。
 いつものように荷馬車をおそった三人組は、思いがけず金貨の山を手に入れました。しかしこんな金貨を不用意に使うのは危険です。まずは金貨を両替しなければなりません。彼らは偽の身分証を手に入れ、外国から来た貴族になりすまして金貨を両替しようと一芝居を打ちます。ところがそのころかなりわけありっぽい外国の貴族が本当に来訪しており、三人組はその貴族と間違われて思いがけない騒動に巻き込まれることになります。
 綱渡りの悪巧みがいつ露見しやしないかとヒヤヒヤしながら読み進めていくうちに、読者はいつの間にか自分が悪党たちを応援していることに気づかされます。さすがは斉藤洋。500ページ超の厚い本でもぐいぐい読ませてくれます。
 重大な伏線と思われるのは、登場人物の雑談の中でかつて時刻を表すのに動物の名前が使われていたという情報が出てくるあたりです。わざとらしく慣用句の使い方を解説する場面もあり、登場人物は日本語を使っているのではないかという疑念が持たれます。ここから素直に推測すると、異世界ファンタジーと見せかけて実はSFだったというパターンに落とし込まれるものと予想できます。となると、動物の顔をした異形の人類の存在がどう説明されるのかか気になります。