「ズッコケ三人組の神様体験」(那須正幹)

 さびれた商店街の活性化のために花山神社の秋祭りを盛り上げていこうというお話です。
 子供たちは賞金十万円がかかったおみこしコンテストに色めき立ちます。ハチベエは地元商店会にコネクションがあると誤解され、普段は嫌われている女子から話しかけてもらえるなど思わぬ僥倖に恵まれます。
 もうひとつの秋祭りの目玉は稚児舞いでした。これは花山八幡に伝わる男の子が真剣をふるって踊る神事で、戦前に絶えてしまったものが数十年ぶりに復活することになりました。ハチベエもこのメンバーに選ばれ厳しい練習をすることになります。やがてハチベエがテストで100点を取ったり未来のビジョンが見えるようになったり、神懸かりとしか思えない現象が起こるようになります。そんな中、稚児舞いに参加した子供は発狂するという噂も流れ……。
 地下鉄サリン事件の衝撃がさめやらぬ頃に正面から宗教の問題に取り組んだ意欲作といえましょう。ハチベエの神秘体験には一応医学的な説明は与えられていますが、それを体験したものがどう受け入れるのかは当人の問題です。ハチベエはどっちに転んでも自分は損をしないように見える賭を試み、自らの体験をやり過ごします。こういう俗物さがハチベエの長所です。神秘体験を受け入れる方法としてひとつの見識ではあります。

 ばっちり漢字練習をしておくべきか、自己の実力にたよるべきか。
 もし、神様がのりうつっているのなら、勉強しなくてもテストは満点だろう。
 かりに、神様がいなくなって、テストが0点だとしても、それはそれで、おいによろこばしいことではないか。
 そこで、ハチベエは決心した。
 漢字の練習なんて、ぜったいやらないぞ。