「大当たりズッコケ占い百科」(那須正幹)

 6年1組で占いが大流行。母親から手相占いを伝授されたハチベエは急にクラスの女子にちやほやされだしました。そこをクラスメイトの市原弘子に目を付けられ、彼女の誘いでハチベエはひきこもり中学生桐生寿美子の家に連れ込まれて「レイコンさん」という降霊術系の占いを教えられます。そんな中クラスで盗難事件が発生しました。ハチベエはレイコンさんに犯人の名前を聞き出してクラスで吹聴し、そのことがきっかけでクラスの女子が二派にわかれて大喧嘩を繰り広げることになります。ハチベエはあいだにはさまれてひどい目に遭います。
 ズッコケシリーズの中でも怖さという点では1,2を争う傑作です。と同時に、那須正幹の女性不信作品群の頂点に位置する作品でもあります。作者があとがきで述べているとおり、この作品には「おせじにも心やさしいひとびととはいいがたい」女性しか登場しません。事件が終わった後ハチベエたちはこのように述懐しました。

「でもな、女ってすげえなあ。あんなことがあったっていうのに、市原も佐々木も秋山も、へいきな顔して学校に出てきてさ。けっこう、にこにこわらいながらしゃべってるんだぜ。」
「内心はわかんないけど、表面的にはなんにもなかったことにするつもりなんだろ。」

 おそらく那須正幹が本当におそれているのは女性ではなく、いろいろなごたごたを塗り固めて強固に続いていく日常なのだと思います。