「うわさのズッコケ株式会社」(那須正幹)

うわさのズッコケ株式会社 (こども文学館)

うわさのズッコケ株式会社 (こども文学館)

 イワシを狙って港に群がる釣り人に目を付けた三人組。ここで弁当や飲み物を売れば一儲けできそうだと思いつき、早速行動を開始します。そこで問題になるのは資金です。はじめは自分の小遣いや友人からの借金でまかなっていましたが、商売の拡大に伴い株を発行してクラスメイトから盛大に金を巻き上げるようになりました。ところがイワシのシーズンが終わり釣り客が激減、大量の在庫を抱えて商売が行き詰まり、三人は株主総会でクラスのうるさがた連中から吊し上げられることになります。
 児童向けの経済の教科書としてここまでおもしろくてわかりやすい本は他にないでしょう。なにしろいきり立った株主を粉飾決算で騙す手口まで紹介しているのだから始末に負えません。ハカセはちょっとしたとんちでピンチを切り抜けたくらいのノリで粉飾決算に手を染め、不正は最後まで追及されません。ハカセの意外な腹黒さが垣間見えるエピソードです。
 三人組の会社の一番の美点は、引き際の良さです。在庫をうまく片づけたところでさらに欲を出さずに、「くたびれたから」という理由で会社たたんでしまう。この姿勢には見習うべきところが多々あると思います。