「四次元潜航艇ウラシマ号の冒険」(那須正幹)

 家が銭湯を営んでいる少女龍子が主人公。ある日彼女が浴場で歌の練習をしていると、浴槽からドラム缶のおばけみたいな機械が飛び出してきて、中から浦島源太郎と名乗る怪しい老人が出てきました。機械は四次元の海を航行するウラシマ号。龍子は老人にいわれるままに機械の修理を手伝うと、元の世界に帰れなくなってしまいます。しかたなく老人につきあっておとぎ話の世界を旅してまわり、不良少年の桃太郎を助けたりと奇想天外な冒険を繰り広げます。
 1979年の「六年の学習」に連載されていた作品です。単行本は翌年に刊行されました。連載用の気楽な読み物なので、比較的筆の赴くままにすらすらと書いたような印象は持たれます。が、それでもラストはしめっぽくまとめあげ、叙情的なSFに仕立てているのはさすがです。