- 作者: 那須正幹
- 出版社/メーカー: 偕成社
- 発売日: 1993/01/01
- メディア: 単行本
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すいとり神
タカオはまじめな少年なのに成績が一向に上がりません。ある日彼がくしゃみをすると、花から小人が飛び出しました。小人は自分はすいとり神という神さまだといいます。彼はタカオが勉強したことを吸い取ってまるまる太っていました。だからタカオはいくら勉強しても成績が上がらなかったのです。
勉強がお仕事とされている子供にとって、がんばっても成績が上がらないということは不条理です。それに実体をあたえたアイディアの勝利です。
ややこしい話
タイムマシンで未来の自分がやってきました。その目的は……?
タイムパラドックスものの基本形。
いたずら
人口が爆発して人の命が極端に軽くなった未来を描いたコメディ。教室で生徒と教師がいたずら感覚で殺し合いを繰り広げるというシュールな話です。
ルリセンチコガネ
ルリセンチコガネというきれいな虫を女の子にプレゼントしたアキオはなぜか彼女から嫌われてしまいます。
なぜ人間は美しいものを美しいというだけで愛でることができないのか?
人の年
朝起きるとは母さんがうさぎになっていた。と、この冒頭だけでトラウマ確定です。
キリン
動物園で体が青白く発光するキリンの子供が生まれた。その秘密とは……?
だじゃれを基盤にしてここまで不条理な世界を繰り広げるというのはなかなかできる技ではないと思います。
おまじない
お話もなんともいえない味がありますが、イラストが一番印象に残るのはこれでしょう。
ビスケット
原爆をテーマにしたやりきれない話。
血ぬられた館
洗っても洗っても血痕が浮かび上がって来るというイギリスの呪われた館を買い取った日本人の目的とは……?
日本人のすばらしい商魂。アイディア勝負ならこの本の中でも1,2を争う出来です。
詩人先生
人気のある国語教師の正体とは……。幻想と現実のギャップが哀愁を感じさせます。
移植時代
移植技術が発達し、ちょっとしたけがでもすぐにスペアの人体と交換できるようになった未来世界。技術の暴走と人間の欲望の歯止めのきかなさをクールに批評しています。
名犬
引っ越しの際友達にあげてしまった犬が、汽車で6時間もの距離のある引っ越し先まで追ってきました。ありきたりの美談に皮肉の効いた落ちをつけています。
目覚まし時計
絶対朝寝坊しない目覚まし時計の秘密。この目覚まし時計が五万円で買えるのなら即決ですよ。
あかぎれ
自分のあかぎれを気に病んでいる子ども。彼が体育の時間のダンスで、憧れの少女と踊れることになります。子どもはうれしさよりも、あかぎれの手を彼女に見られることを心配していました。ところがそのダンスのために、子どもは女嫌いになってしまいます。
本書のリアリズム系の作品のなかでも白眉です。子供の傲慢を糾弾することはいくらでもできますが、その気持ちは理解できなくもありません。那須正幹はその作品から女性不信疑惑がもたれていますが、もしかしてこの話は実体験とか……?
地球の滅亡
文明批判を展開するSFは数あれど、〈星の栓〉というアイディアの突飛さでこの作品は異彩を放っています。