「盗角妖伝」(廣嶋玲子)

盗角妖伝 (新・わくわく読み物コレクション)

盗角妖伝 (新・わくわく読み物コレクション)

 昨年四回ジュニア冒険小説大賞受賞作「水妖の森」でデビューした廣嶋玲子ですが、今年は空気系妖怪小説「はんぴらり!」シリーズ3作とこの「盗角妖伝」の計4作を刊行し、快調な滑り出しを見せています。これでジュニア冒険小説大賞出身者は育たないという負の神話は払拭されそうです。
 さいころのつくも神乙音を相棒にいかさま賭博をして生活している戦国時代の少年源太が主人公。彼は怪しげな女との賭けに敗れて乙音を奪われてしまいます。同じく女に大事な角を奪われた鬼の少年を仲間にして女を追うことになりますが、ふたりとも我が強いのでけんかしてばかり。はたしてふたりは無事大切なものを取り戻すことができるのか……。
 登場するキャラクターは個性が強く華やかなので、楽しく読み進んでいけます。物語も最後まで緊張感を失うことなくいいペースで進んでいきます。欲をいえば、この分量であれば一本道のストーリーにせず、伏線を張り巡らせて少しひねりを入れてもよかったと思います。