「リバウンド」(エリック・ウォルターズ)

リバウンド (福音館の単行本)

リバウンド (福音館の単行本)

 不良少年のショーンと車いすに乗った転校生デーヴィッドの友情の物語です。転校初日ふたりはとっくみあいの大げんかを繰り広げてしまい、それがきっかけでショーンはデーヴィッドの世話係を押しつけられることになります。
 ショーンがデーヴィッドと一緒に車いすに乗ってショッピングセンターに出かける場面が印象に残りました。

「ようこそ、車いすの世界へ」
車いすに乗るってことは、一種の公共物になるってことだ」
(p247)

 見知らぬ人が勝手に車いすをつかんでくる。やたら声をかけてきて肩や頭をたたいていく。車いすに乗っているというだけで、なぜだかショーンは人々から暴力としか思えないような仕打ちを受けることになります。おそらくそれは善意から出た行動なのでしょう。でも、障害者にとってそうした行動は脅威でしかないことをショーンは思い知らされます。デーヴィッドは飄々とした明るい少年に見えますが、このような心ない言動によって常に疲弊させられていました。デーヴィッドのような障害者が戦っているのは身体が自由に動かないことによる不便さだけではありません。「普通」の人間の何気ないふるまいとも日々戦っていかなければなりません。そんな過酷な状況が「公共物になる」という言葉で実に端的に表現されています。