「倒立する塔の殺人」(皆川博子)

倒立する塔の殺人 (ミステリーYA!)

倒立する塔の殺人 (ミステリーYA!)

 理論社「ミステリーYA!」の一冊。ミッションスクールの女学生が回し書きした「倒立する塔の殺人」というタイトルの小説を巡る物語です。作中作を巧みに使うのはさすが皆川博子。さらに目を引くのは、作品世界に濃密に漂う毒、棘、悪意です。
 同年代の女子ばかりが無理矢理押し込められた空間が居心地いいわけがありません。特にこの物語の中心人物は集団から疎外されている少女ばかりなので、よけいに息苦しく感じられます。探偵役の少女は異分子だからと「イブちゃん」という綽名を付けられています。センスのかけらもない綽名が、かえってこの空間に瀰漫する悪意のおどろおどろしさを強調しています。