「ぼくらが大人になる日まで」(岡田依世子)

ぼくらが大人になる日まで

ぼくらが大人になる日まで

 第37回講談社児童文学新人賞で佳作をとった「霧の流れる川」で1998年にデビューした岡田依世子が、およそ10年ぶりに発表した単行本第2作です。デビュー作では花岡事件を題材にした岡田依世子ですが、今度は小学生が国会議員に「ぼくたちは、この国の大人を、信じていいですか?」と問いただす話を書き、またもど真ん中にものすごい直球を投げてくれました。
 中学受験を目指し同じ塾に通う六人の小学六年生の物語です。それぞれに悩みを抱え行き詰まっていた子供たちは、塾講師の里ちゃんの誘いで国会議事堂の見学に出かける計画を立てます。受験直前の大事な時期に社会科見学なんてとんでもないと他の塾講師や親から横槍が入りますが、六人は大人に黙って自分たちだけで国会に出かけてしまいます。
 それぞれの子供の抱える問題は取り立てて珍しいものではありません。しかし、中学受験という厳しいストレスにさらされた子供たちの極限まで張りつめた心情を追いかけることで、確かな強度を持った物語が紡ぎ上げられています。
 それにしても、これだけの作品を書ける作家を10年近くも遊ばせていた講談社の罪は重いと断じざるを得ません。ぜひ次の作品はすみやかに拝ませてもらいたいです。