「小さなスプーンおばさん」(アルフ・プリョイセン)

小さなスプーンおばさん (新しい世界の童話シリーズ)

小さなスプーンおばさん (新しい世界の童話シリーズ)

 なぜ突然スプーンおばさんかというと、人類が衰退するお話を読んでしまったからで、あの怒濤のパロディ攻撃には笑わせてもらいました。児童文学関係のパロディを拾ってみると、まずは「スプーンおばさん」。ネズミと白イタチが抗争するというのは「ガンバの冒険」(斎藤惇夫)しか考えられません。カエルスーツを着た小人は佐藤さとるの「コロボックル」シリーズ。小人になると時間感覚が狂うというのは「ズッコケ三人組の地底王国」(那須正幹)及びそのネタ本の「ゾウの時間ネズミの時間」(本川達雄)でしょう。
 だんだんこじつけっぽくなってきた気がするので、本題に入ります。ノルウェーの児童文学、体が突然縮んでしまうティースプーンおばさんのお話です。物語の導入は至って簡単です。ある朝目を覚ましたら体が小さくなっていた。でも家事をしなくてはならない。どうしよう。これだけです。作者はなぜ体が小さくなったのかなどという些末な問題にはいっさい筆を割きません。ここに合理的な説明は必要はないのです。おばさんの問題解決の方法に論理性があれば、物語はエンターテインメントとして成立します。
 さて、ティースプーンおばさんにとって、こんなことはどうということのないアクシデントでしかありませんでした。彼女はまず家の掃除に取りかかりますが、いとも簡単にこなしてしまいます。その方法は動物を脅迫して働かせるというものでした。ネズミに掃除をしないとネコをけしかけるぞと脅すような具合で、てきぱきと片づけてしまいます。
 次の仕事は洗濯。おばさんは洗濯桶に水を入れるため、雨を挑発して怒らせ、雨を降らせてしまいます。そして風には自分を吹き飛ばしてみろとけしかけ、洗濯物を吹き飛ばしてもらいます。最後は太陽に悪口を言い燃え上がらせて、洗濯物を乾かします。

「あたしは、生まれてからなん十年にもなるけどさ、むかしは、太陽なんてものも、たまには、顔を出したもんだった。ところが、いまじゃ、太陽も、とうとう、力がなくなっちゃったんだね。」

 三番目の仕事は炊事。今度はおばさんはフライパンや食材をおだてて調理させてしまいます。
 体が小さいというハンディキャップは、かえっておばさんの強さを引き立てる役割を果たしています。生物も無生物も自然現象さえも自在に操ってしまうおばさんのキャラクターは強烈な印象を残します。実際こんなおばさんが隣人だったらものすごくいやでしょうけど。 
 とはいえ、日本人にとって「スプーンおばさん」といえばやはりアニメ版の方です。懐かしいのをふたつほど貼っておきます。
アイドルマスター「夢色のスプーン(飯島真理)/スプーンおばさん」修正版
アイドルマスター「リンゴの森の子猫たち(飯島真理)/スプーンおばさん」

人類は衰退しました 2 (ガガガ文庫)

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