「フリッツと満月の夜」(松尾由美)

フリッツと満月の夜 (TEENS’ ENTERTAINMENT)

フリッツと満月の夜 (TEENS’ ENTERTAINMENT)

 小説家の父親の気まぐれで海辺の町で夏休みを過ごすことになったカズヤ。金色のピアスをつけた猫がうようよいたり、ダビデの星の落書きをされている家がたくさんあったりと変なことのたくさんある町で、カズヤは資産家の遺産を巡る事件に巻き込まれます。
 探偵役から仕掛けの一端を説明された時点で、ミステリファンであれば序盤にチ○○○○○の名前が出てきたことが伏線であったことに気づくでしょう。あとはその条件に該当する人物が誰であるかを推理すればいいという趣向です。
 ポプラ社の新レーベル「TEENS’ ENTERTAINMENT」の第一弾です。第二弾の花形みつる「アート少女」も同時に発売されています。児童文学界の知名度を考えれば花形みつるがトップバッターでも申し分ないはずですが、そこをあえてミステリファンやSFファンの間で評価の高い松尾由美を持ってきたということは、講談社の「ミステリーランド」や理論社の「ミステリーYA」に対抗したいという意志があるのでしょうか。と思いきや、執筆予定者をみると名木田恵子藤咲あゆなにごとうしのぶと、見事にわたしの守備範囲外の女の子向け作家ばかりで肩すかしを食ってしまいました。