「アート少女」(花形みつる)

 アンソロジーasin:4591098532:title=Fragile」に収録された短編「アート少女」の続編が、ポプラ社の新レーベル「TEENS’ ENTERTAINMENT」の第二弾として出ました。学力向上のため美術部から部室を取り上げようとする校長に立ち向かい立てこもり事件まで起こした美術部の面々は、相変わらず校長の弾圧を受けていました。校内を放浪してゲリラ的にアートに励む美術部員たちは、立てこもり事件の補償で部費を全額取り上げられて文化祭参加のための費用を失ってしまいます。でもそこでくじけないのが部長根岸節子をはじめとするアウトロー集団美術部です。彼女たちは人気のある運動部員のポートレートを売って荒稼ぎをします。しかしやっぱり派手なことをすると校長に目をつけられて活動をつぶされてしまいます。さらに「部員を5人集めないと廃部」的なお約束イベントもありつつ、美術部の戦いの日々は続きます。
 学力テストにおびえて生徒をいじめる校長を悪役とする物語ですから、社会風刺はよく効いています。こうした現状が寛政の改革に喩えられているところがおもしろいです。確かにいろんなところで締め付けの厳しくなっている現代はあの時代に近いかもしれません。花形みつるの時代を見る目の確かさが感じられます。
 でもそうした社会風刺的な面は、この作品を楽しむ上で最重要なポイントではないような気もします。ではなにが一番重要かというと、個性的すぎて浮いている子供たちが好きなことに打ち込んでいる姿を生き生きと楽しそうに描いていることだと思います。一人一人が勝手なことをしながら、結果的にまとまってひとつの事を成し遂げる。そうした中学校生活のあり方は、美術部顧問のモジリアニの言葉を借りれば「突き抜けていて、バカバカしくて……、なんというか、崇高」です。