「エクボ王子の帰り道」(後藤みわこ)

 後藤みわこの日常の謎系学園ミステリ「ぼく、探偵じゃありません」の続編です。前作と変わらず傍若無人な姉の知世と病弱美少年で探偵役のリキの漫才がさえわたっていて、楽しい読み物になってました。
 表題作の「エクボ王子の帰り道」は小学一年生の男の子が箱に入れて持ち帰ったはずの卵が下校中にカステラに変身していたという謎に挑みます。聞き込みによって探偵役が下校中の様子を探っていくだけなので謎解き要素はないのですが、捜査が進むに従って下校という日常の出来事がドラマチックな大冒険に変容していくのがおもしろかったです。
 ミステリとしての出来がよかったのは第二話の「赤勝て、白勝て、青も勝て!」でした。運動会でマーチングをする児童の衣装が消失してしまう話です。隠し場所がいい盲点になっていました。こっちは運動会という非日常空間の中で捜し物をする様子が実に楽しそうでよかったです。