「進め! 女優道1 七夕スペシャルドラマ篇」(長江優子)

進め! 女優道 1 ≪七夕スペシャルドラマ篇≫ (YA! ENTERTAINMENT)

進め! 女優道 1 ≪七夕スペシャルドラマ篇≫ (YA! ENTERTAINMENT)

 2007年に講談社児童文学新人賞佳作受賞作「タイドプール」でデビューした長江優子の第二作、「砂霊」というホラー映画で有名になった「幼き天才女優」飯野りりすの物語です。映画で高い評価を受けた彼女ですが、「子役は大成しない」というジンクスに悩まされスランプに陥っていました。そんな彼女にホームドラマの仕事が舞い込んできます。ところが制作発表記者会見で母親役の女優を怒らせてしまい険悪なムードに。はたしてドラマの撮影は成功するのか?
 芸能界では子供も大人も同じ土俵で闘わなくてはなりません。そんな環境でりりすは大人の欲望に翻弄されながらも自分の欲望も主張しました。持ち前のオッサンくささを発揮しながら奮闘するりりすは非常にたくましくて、思わず応援したくなります。ぜひ長いシリーズになってもらいたいと思います。
 さて、この作品の主人公飯野りりすはある大きな特徴を持っています。それは「ブス」であること。彼女は実の親からいつも「器量の悪い子は人の十倍がんばらないといけない」と言い聞かされているほどの「ブス」だそうです。ここまで主人公が「ブス」であることを強調している児童文学は他に思い浮かびません。
 彼女の出世作がホラー映画であることも念が入っていますし、なにより「リリス」というおおよそ主人公にふさわしいとは思えない名前を与えられているところが意味ありげです。彼女は呪術的な「醜パワー」((C)大塚ひかり)の持ち主として造形されていると言ってしまうと深読みのしすぎでしょうか。