「光車よ、まわれ!」(天沢退二郎)

光車よ、まわれ! (ピュアフル文庫)

光車よ、まわれ! (ピュアフル文庫)

 ピュアフル文庫から伝説の暗黒ファンタジー「光車よ、まわれ!」が出ました。もはやわたしにはピュアフル文庫をたたえる言葉を見つけることはできません。
 この作品に関しては、ストーリーを追いかけることにはあまり意味はありませんし、理屈をこねる必要もありません。ただ幻想的なイメージの奔流を感じ取ればいいのです。
 水たまりの溺死体、国立図書館の夜間閲覧室、石段の間から滲み出てくる水、地霊文字、緑色の制服を着た「機動隊よりもケイサツよりも、もっとこわいもの」たち、まっ黒でまんまるい顔の小人の集団、赤い矢じるし、赤い水、水中から飛び出してくる釣り針、ふたごの死体、水上の野外音楽堂、人体都会説、上下さかさまの巨大な鳥瞰図、そして水、水、水……。
 確かな質感を持った美しい悪夢の世界。これを読まずにファンタジー児童文学を語ることはできません。