「シチリアを征服したクマ王国の物語」(ディーノ・ブッツァーティ)

シチリアを征服したクマ王国の物語 (福音館文庫 物語)

シチリアを征服したクマ王国の物語 (福音館文庫 物語)

 「光車よ、まわれ!」の文庫化で盛り上がっている天沢退二郎ですが、他にも彼の幻の傑作が今年になって文庫化されていました。増山暁子との共訳の「シチリアを征服したクマ王国の物語」です。
 冬の寒さにたまりかねて山をおりることを決意したクマたちが、人間の軍勢や恐ろしいトロル、巨大なばけ猫を倒してシチリアに王国をつくる物語です。しかし人間風の生活に染まったクマたちは堕落し、やがて王国は瓦解してしまいます。
 作者はイタリアを代表する幻想文学の書き手ディーノ・ブッツァーティです。物語のおもしろさもさることながら、ブッツァーティ自身の手による挿絵にもまた特筆すべき魅力があります。画面を覆い尽くすクマや人物のひとりひとりに物語が感じられて、いくら眺めていても飽きません。