「トライフル・トライアングル」(岡田依世子)

トライフル・トライアングル

トライフル・トライアングル

 二冊目の単行本を出すのに十年近くかかった岡田依世子が三冊目の本を一年もかからずに出せたことをまず喜びたいです。
 主人公は二卵性双生児の健と愛。健の趣味はビーズ織りで愛の趣味は柔道という、とりかへばやなふたりでした。彼らの住むマンションの一階に喫茶店がオープンし、ふたりは店主の背の高いかっこいいお姉さんと仲良くなります。ところがそのお姉さんは実は性同一性障害で手術で女の体になった身だったことがわかり、一悶着起こることになります。
 というわけで、岡田依世子はセックスとジェンダーというまたもド直球なテーマを投げてきました。ジェンダーから逸脱した双子の関係性を中心に、加害者と被害者が容易に反転しうる問題の複雑さを丁寧に描き出しているのはさすがです。
 後半の展開がやや強引で、先に主張ありきで物語をつくっている感は否めないものの、テーマの掘り下げ方は申し分なく充分に読み応えはあります。岡田依世子にはぜひこの調子で書き続けてもらいたいです。