「ズッコケ中年三人組age43」(那須正幹)

ズッコケ中年三人組age43

ズッコケ中年三人組age43

 「ズッコケ中年三人組」ももう4冊目。年末のお楽しみとしてすっかりおなじみになりました。今回はハチベエの元に赤紙が届くお話です。
 ミドリ市内で殺人事件が発生。被害者はストーカー男で、容疑者としてあがったのはストーカー被害者の父親でした。ハチベエ裁判員として法廷に呼びだされ、この事件を裁くことになります。ハカセやモーちゃんらいつもの面々も野次馬として裁判を傍聴。6年1組のアイドルのひとり榎本由美子も証人として法廷に立ち、裁判所を会場にして全然楽しくない同窓会が開催されます。
(以下結末に触れます。)

 特筆すべきはひどい後味の悪さです。この事件は物的証拠が乏しかったため、推定無罪の方向に流れていきます。しかし人間は神様ではないので、決定的な証拠がなければ自らの下した判断に確信を持つことはできません。現実にはミステリに登場するような名探偵は存在しないので、すっきりと真相が明らかになることもありません。
 しかし作者はいじわるにも、ミステリのような快楽を読者に期待させます。裁判員のひとりとして頭の切れるイケメン青年を登場させ、彼に探偵役を期待させたり、三人組の中で唯一の理論派のハカセにも独自の推理をさせたりと、事件のきれいな解決を予感させます。でも結局真相は藪の中で、あの気持ち悪い結末ですよ。作者はわざと後味の悪さを演出することで、暗に裁判員制度を批判しているように感じました。フィクションでさえこれだけ後味が悪いのですから、本当に裁判員になってしまった日にはどうなってしまうことか。