「minor club house1 マイナークラブハウスへようこそ!」(木地雅映子)

マイナークラブハウスへようこそ!―minor club house〈1〉 (ピュアフル文庫)

マイナークラブハウスへようこそ!―minor club house〈1〉 (ピュアフル文庫)

 正月から木地雅映子の小説が読めるとは、なんて幸せなんでしょう。毎回いっていることですが、ジャイブにはいくら感謝しても感謝したりません。
 名門校として名高い中高一貫校那賀市桃李学園の高等部の一角に、マイナークラブハウスと呼ばれる古い洋館がありました。そこは弱小文化部の吹きだまりで、変人たちの巣窟になっていました。新入生勧誘のために戸板の上に死体(役の役者)を乗せて葬列ごっこをするなど、やることは過激で過剰。マイナークラブハウスに集った変人たちの愉快で時に切ない学園生活が語られます。
 登場するキャラクターは奇矯で、ギャグてんこ盛りの本作は、まるでライトノベルのようにみえます。しかしこれは別に驚くことではありません。93年に群像新人賞でデビューした当時、彼女はよしもとばなな(当時は吉本ばなな)に代表されるような少女漫画や少女小説の影響を受けた作家に分類されていました。ですから21世紀にアップデートされた木地雅映子ライトノベルに接近するのは自然なことです。
 ちなみにピュアフル文庫編集部は本作を「有閑倶楽部」、解説の三村美衣は「桜蘭高校ホスト部」のようだと評してます。確かにこの作品のギャグのシュールさは少女漫画に向いています。ぜひ表紙イラストを描いている志村貴子にそのまま漫画化してもらいたいです。
 さて、手法としてはライトノベル寄りになっていますが、テーマはいつも通り、変人と「普通」の戦いです。デビュー作「氷の海のガレオン」は「普通」の圧力につぶされそうになる天才少女の物語でした。再デビュー後の長編「悦楽の園」では、「普通」を転覆しようとする革命は挫折してしまいました。新作の変人たちは、「マイナークラブハウス」という隔離された楽園で気儘に青春を謳歌しているようにみえますが、それでも「普通」に押しつぶされないだけのしぶとさを持っています。まだまだシリーズは始まったばかり。今度は変人たちがなにをやらかしてくれるのか、続きが楽しみでなりません。