「C&Y地球最強姉妹キャンディ 大怪盗をやっつけろ!」(山本弘)

 昨年の総括で児童書SFに目立った収穫はなかったと書きましたが、撤回します。年末に山本弘作品が出ていました。いや、その前に、角川書店が昨年から始めた新レーベル「銀のさじ」は、この作品を含めて現段階で出ている4作すべてSFではありませんか。角川書店よくやった。ついでに「角川つばさ文庫」もSFのレーベルにしちゃえばいいと思うよ。
 では、児童文学界に久しぶりに登場した傑作SFを紹介します。主人公はふたりの11歳の少女です。竜崎知絵は11歳にして大学の先生をしている天才少女。虎ノ門夕姫は冒険家の父親とともに世界中を巡っているため、やたらサバイバル能力の高い少女です。この世界一頭のいい女の子と世界一強い女の子がなんと親の再婚で姉妹になってしまいます。そして知絵の新発明が怪盗に狙われてしまったことから、ふたりの大冒険が始まります。
 鬱屈した天才少女がぶっ壊れてはじけるカタルシスがたまりません。おまぬけなのにかっこよくて憎めない敵役も物語を盛り上げてくれます。そしてなにより、宇宙を楽しい夢の空間として見事に描ききっていることがこの作品の最大の魅力です。クライマックスの美しくかつばかばかしい光景も最高です。
 児童向けの娯楽SFとしてはこれ以上は望めないんじゃないかと思えるくらい楽しい作品でした。