「あやとりの記」(石牟礼道子)

あやとりの記 (福音館文庫 物語)

あやとりの記 (福音館文庫 物語)

 石牟礼道子の「あやとりの記」が福音館文庫になりました。さすが福音館は後世に残すべき作品がわかっています。
 石牟礼道子は、ライフワークとして水俣病の問題に取り組んでいる作家・詩人として知られています。しかし、この作品を楽しむのにそういった予備知識は不要です。
 「あやとりの記」で語られているのは、幼いみっちんと「ものたち」や「あのひとたち」との交歓です。狐さんや死人さんや山の神さま、または気のふれた人々や社会の最底辺に追いやられた人々。近代から切り捨てられたものたちの豊饒な世界がここにあります。
 とりあえずこの歌を聴いて何か感じるものがあった方には、「あやとりの記」を強くおすすめします。
ファンタジー『あやとりの記』より 「鋸曳き唄」

ごーいたごいた/ごーいたごいた/今日の雪の日/鋸曳く者はよ/なんの首曳く/親の首/ごーいたごいた/ごーいたごいた

 さて、みっちんのような少女時代を過ごした石牟礼道子は、やがて彼女にとっての近代の象徴と言える企業と対峙することになります。それがチッソです。ついでに水俣病をテーマにした石牟礼道子のトラウマソングも貼っておきます。
「はかい」〜しゅうりりえんえん〜
組曲『しゅうりりえんえん』より 「ゆうきすいぎん」