「新 妖界ナビ・ルナ1 ルナVS涼宮ハルヒ」

新 妖界ナビ・ルナ(1) ガラスの指輪 (講談社青い鳥文庫)

新 妖界ナビ・ルナ(1) ガラスの指輪 (講談社青い鳥文庫)

紆余曲折あって人間界に戻ってきたルナでしたが、ちょっと様子が違うことに気づきました。いままでルナがいたのは人間界の四つ葉の国だったのに、なぜか戻ってきたのは音羽の国だったのです。とまどうルナの前に音羽の国の偉い人が現れて、頼み事をしてきました。彼によると音羽の国は最近角川の国から攻められていて、凶暴な美少女魔道士や緑色の宇宙人など、様々な刺客が送られてくるのだといいます。近々今までの刺客よりさらに強力な刺客が送られてくるとの情報が入ったので、ぜひルナの力を借りたいのだそうです。
ルナは、「ところでわたしはなぜ四つ葉の国ではなく音羽の国にいるのでしょうか?」と尋ねましたが、偉い人は「とにかく困っているのだ」の一点張り。どうやらその話題にはあまり触れてほしくないようです。でも、ルナはもともと人がいいので、とにかく困っている人がいるのなら助けなければと思い、音羽の国に協力することを決意します。
ということで、誰も予想し得なかった新展開、「妖界ナビ・ルナ音羽編」のスタートです。とにかく角川が送り込んできた刺客の恐ろしさといったらありません。涼宮ハルヒという名の刺客は、手下に宇宙人と未来人と超能力者を従えていて、さらに「きょうあに」とかいう神様まで味方にしているのです。四つ葉の国では最強の名をほしいままにしていたルナも、さすがに苦戦を強いられそうです。
ルナが音羽に来た理由はいまだにはっきりとしませんし、「ななじゅうろくおくはっせんろっぴゃくまんえんのあかじ」なんていう謎めいたキーワードも登場して、読者の興味を惹きつける工夫もばっちりです。
とにかく、音羽の国と角川の国の戦いは始まったばかり。この戦いにルナがどう絡んでいくのか、今後もルナの活躍から目が離せません。



以上、ウソ書評でした。
上に書いたことはすべて妄想ですが、最近の書店の児童書棚は、こんな妄想をしたくなるくらい熱い状況になっているのです。ようするに、新たな分野を開拓しようと果敢に冒険する角川グループと、新参者を叩きつぶそうとする講談社の対立の構図が妄想されてしまうのです。
フォア文庫で人気ナンバーワンの「妖界ナビ・ルナ」が青い鳥文庫に移籍されると聞いた時は、事情を知らない読者は皆不可解に思ったはずです。ところがふたを開けてみると、「ナビ・ルナ」の移籍後第1作と同時期に角川グループが角川つばさ文庫版「涼宮ハルヒの憂鬱」をぶつけてくるという事態になりました。これでこの6月は、児童文学界とライトノベル界を代表する人気キャラクターが児童書文庫のコーナーで激突する熱い展開が見られることになったのです。今になって思えば、これも運命のいたずらといえるのではないでしょうか。この対決に当事者である子供の読者がどんな審判を下すのか、興味深い限りです。
講談社と角川グループの対決が見られるのは児童書文庫のコーナーだけではありません。高学年向けハードカバーのコーナーでも熱い戦いが繰り広げられています。角川グループがつばさ文庫に先立って立ち上げた「銀のさじ」というレーベルは、5月の第3回配本で荻原規子・濱野京子・寮美千子というそうそうたるメンバーの新作を一挙4冊(上下巻が1作あるため)刊行し、存在感をアピールしています。それと並んで新刊コーナーを占拠していたのは、講談社の書き下ろし100冊はやみねかおる作品と笹生陽子作品。講談社が意図しているかどうかはわかりませんが、講談社の書き下ろし100冊の児童書部門は、「銀のさじ」を迎え撃つ形になっています。
とにかく、講談社と角川グループの戦いは始まったばかり。この戦いの行方からしばらく目が離せそうにありません。