「復活！！虹北学園文芸部」（はやみねかおる）

復活!! 虹北学園文芸部

「夢水清志郎シリーズ」の番外編。亜衣が去ったのち部員不足で消滅した虹北学園文芸部を復活させるため、亜衣のいとこの岩崎マインが部員集めに奔走する話です。やはり部活ものといえば、最低５人の部員集めがお約束です。さすがはやみねかおるはお約束に忠実です。
運動部ものなら話は簡単。スポーツは元々ショーとしての要素も持っていますから、話を盛り上げるのは容易です。でも文化部はそうはいきません。文化部バトルをいかにエンターテインメントとして成立させるかが作者の腕の見せ所になります。そこをはやみねかおるは勢いと演出力で見事に押し切り、上質の娯楽読み物に仕立てています。
肉体をいじめ抜く過酷なトレーニングなどスポ根のお約束を取り込みつつ、文化部ならではのバトルが展開されます。特に面白かったのは５人目の部員獲得のエピソードでした。躁病的な饒舌が愉快です。もはや言葉は意味を持たず、踊っているだけ。かんべむさしの「議事ひきのばし」なんかを思い出してしまいました。この部分だけ文字を小さくする演出もうまい具合にはまっています。
ぜひシリーズ化して文芸部の戦いをもっと見せてもらいたいです。虹北学園内だけでこれだけのつわものが揃ったのだから、全国大会レベルになるとものすごいオカルト能力者が出てくるはずです。他校の文芸部員との熱いバトルが期待されます。
ここのところ漫画やアニメでは文化部ものがはやっていますね。かるた部に書道部に軽音部に麻雀部に天文部に、いろいろな文化部が活躍しています。実は最近、児童文学・ＹＡ界でも文化部小説が元気です。

花の道は嵐の道―タマの猫又相談所 (TEENS’ ENTERTAINMENT)

華道部。

Hは人のためならず (YA! ENTERTAINMENT)

奉仕活動部。

園芸少年

園芸部。

レッドシャイン

エネルギー研究会。

科学探偵部ビーカーズ!〈2〉―激突!超天才小学生あらわる (ポプラポケット文庫)

科学探偵部なんてのも。

マイナークラブハウスの森林生活―minor club house〈2〉 (ピュアフル文庫)

あんまり部活をしている気配はないけど、この作品にはウクレレ部、園芸部、演劇部、思想研究会、歴史研究会、和琴部が登場します。
こういう状況なのですが、これをブームと呼べるだけの域に押し上げるには、なにかひとつかふたつ核となる人気シリーズに登場してもらう必要があります。人気や実績を考えるなら、今のところはやみねかおるがもっともその役割にふさわしい人物といえそうです。文化部小説を盛り上げる意味でも、この作品のシリーズ化に期待したいです。