「サナギの見る夢」(如月かずさ)

サナギの見る夢

サナギの見る夢

第7回ジュニア冒険小説大賞「ミステリアス・セブンス―封印の七不思議」でデビューした如月かずさですが、こちらで講談社児童文学新人賞の佳作もとっていたようです。期待されている新人とみていいのではないでしょうか。
小学6年生の子供たちが、卒業パーティーのために映画を撮る話です。主人公の家に新しいお父さん候補が上がり込んでいたり、映画に出てくる怪人が現実に出没する噂が流れたり、映画撮影の方針をめぐって対立が起こったりと、トラブルが続きます。
作品世界は幸福な小学校生活が終わってしまう事への悲しみで満ちています。失われるものへの痛切な思いが印象に残る作品です。
ただひとつだけひっかかるのは、登場する子供たちの精神年齢が高すぎることです。女子ならばまだ話はわかりますが、小6の男子がここまで大人びているのは不自然に感じられます。同時に、小6男子がこんなにも失われゆくものにこだわることにも違和感があります。大人の視点、大人の感傷が入り込みすぎているのではないかと疑問に思いました。
その部分を除けば完成度の高い作品であることは間違いありません。第3作が楽しみです。