「マイナークラブハウスは混線状態」(木地雅映子)

ピュアフル文庫がお亡くなりになり、ポプラ文庫ピュアフルとして再スタートするそうです。親会社と子会社の事情はわかりませんが、たった4年でここまで築き上げられたピュアフル文庫のブランドイメージを捨ててしまうのは愚挙としか思えません。
さて、「マイナークラブハウス」の三巻です。本当に木地雅映子が年三冊本出しちゃったよ。冷静になれないのでちょっと叫んでいいですか?
「だ・チョーッ!だ・だ・だ・だチョーッ!だだだだだだだチョーーーッ!!」
「だちょおおおおおおおおおうっ」

失礼しました。これで少し落ち着きました。
「マイナークラブハウス」二巻では、世代間で不幸が継承されるシステムに対する問題意識が浮上してきました。三巻の第十一話では、ぴりかがこのシステムについて直截にこのように語っています。

大人たちは今も、自分たちの傷を引き継がせるための形代として、子供たちの魂を呼び寄せている……。(p26)

この観点から見るならば、第十三話の内田沙鳥のエピソードに注目する必要があります。いじめでバレー部を追放された沙鳥でしたが、演劇部に新たな居場所を見出しそれなりに現状に満足していました。それなのに彼女をバレー部に復帰させようと、家族が総出で学校に抗議に出向きます。沙鳥は理屈の上では自分の家族がゆがんでいることを理解しています。

「謝ってはだめだ。それは君の問題じゃない。」
急に厳しい口調になって、カウンセラーの先生はぴしりと遮る。
「今までに、お父さんのしたことで、お母さんが誰かに平謝りに謝る、なんて構図を、いいやってほど見てこなかったかい?」
「……。」
「そして、一見犠牲者のように見えるお母さんが、実はそうやって己を保っているのだと、薄々感じたことは?」
「……はい。」
「同じことをしてはいけない。君は君だ。」 (p152〜153)

しかし実際に家族が涙ながらに学校に抗議する場面を目の当たりにしてしまうと、「あたしの、あったかい家族」が「一丸となって、(自分を)回復させようとしてくれている」というストーリーにうっかり籠絡されそうになってしまいます。ここのせめぎあいの描写がただならぬ迫力を持っていました。こういう風に泣かれたら普通は洗脳されちゃうよねと思わされる説得力があり、大変怖かったです。
おそらく沙鳥は、独力で家族の呪縛から逃れることはできなかったでしょう。彼女が家族からの逃走に成功できたのは、彼女をサポートしてくれた周囲の人間が、まったく空気を読まないギャグでおそらく意図的に場の空気をぶちこわしてくれたからです。特にぴりかがすごかった。彼女の道化としての肝の据わりかたが強く印象づけられました。