「ハーブガーデン」(草野たき)

ハーブガーデン (物語の王国 10)

ハーブガーデン (物語の王国 10)

中学生向けのファッション誌の看板モデルさくらちゃんに憧れている小学5年生の由美が主人公。さくらちゃんがエッセイでクローバーの生えている空き地に寝っ転がっていた話を書いていたのでそれをを真似していたところ、さくらちゃんにそっくりの美少女に声をかけられます。由美は綾芽と名乗ったその少女にハーブティー専門のカフェに連れて行かれます。由美はハーブティーにもそのカフェのオーナーにもさして興味はありませんでしたが、綾芽さんに会いたいがために習い事の月謝に手をつけてまでカフェに通い詰めるようになります。
岩崎書店草野たきが北見葉胡と組んだ作品というと、傑作ホラー「教室の祭り」が思い出されます。あれと比べると「ハーブガーデン」結末がとんとん拍子にうまくいっているので、甘いように思えてしまうかもしれません。しかし両作品の思想は同じです。
草野たきは常にコミュニケーションとディスコミュニケーションの間で揺れる子供を描いている作家です。しかしそれよりも、人とつながるか否かを自分で選択できることに希望を見出していることが彼女の作品の主眼です。「ハーブガーデン」と「教室の祭り」は、選択の結果いい方向に転ぶか不幸になるかの違いはありますが、それはあくまで結果でしかありません。選択の結果を自分で引き受けられるということに価値を置くならば、茨の道を歩むことになった「教室の祭り」もある意味でハッピーエンドといえるかもしれません。