「よいこの君主論」(架神恭介 辰巳一世)

よいこの君主論 (ちくま文庫)

よいこの君主論 (ちくま文庫)

よい子のみんなへ
この本では、クラスを制圧するために役立つ知識や、下々の者どもの心理などを分かりやすく解説しているよ。
2002年に目立小学校5年3組で実際に起こった、クラスの覇権争いのお話を題材に、5年3組のみんながどのような政略や姦計を用い、どのように盛衰していったか、ふくろう先生が詳しく教えてくれるんだ。
そしてそこから、君主を目指すきみたちにとって、ためになる普遍的な真理を引き出すことができるよ。
さあ、みんなもふくろう先生と一緒に、立派な君主になるための方法を学んでいこうね。
(p10)

小学生向けの学習書に擬態した冗談本です。が、小学生でも読めるわかりやすい本なので、知らんぷりして小学校の学校図書館に紛れ込ませてみると面白いかもしれません。
個性的な小君主たちが跋扈する5年3組の教室の権力闘争の物語を通して、マキャベリズムを楽しく学ぶことが出来ます。物語で語られるのは、遠足で友達とお菓子を分け合う場面や、マラソン大会の前に「一緒に走ろう」という約束する場面など、どんな小学校でもありそうなありふれた風景です。しかしその裏には信じられないような姦計がはりめぐらされています。あの恐ろしい帰りの会での人民裁判ですら、力のある君主は自分の勢力を伸ばすための道具として使いこなしてしまいます。マキャベリズムの入門書としては最適の一冊です。