「すみ鬼にげた」(岩城範枝/作 松村公嗣/絵)

すみ鬼にげた (福音館創作童話シリーズ)

すみ鬼にげた (福音館創作童話シリーズ)

出た瞬間からロングセラーになることを約束された傑作です。まず読者は、表紙の枠から飛び出そうとする鬼の存在感に圧倒され、作品世界に引き込まれてしまいます。
唐招提寺の修復工事に参加した宮大工見習いの少年ヤスと、唐招提寺の金堂の屋根を支えている鬼の出会いから物語は始まります。鬼は元々中国の生まれで、日本の鬼と勝負しようと鑑真の船に乗り込んでやってきましたが、鑑真によって金堂のすみ鬼にされてしまい望みを果たせずにいました。鬼の身の上話を聞いたヤスは鬼を解き放ってしまいます。そして鬼に連れられ、日本の鬼との勝負に立ち会うことになります。
この作品にはさまざまな化け物や神仏が登場しますが、彼らの持つ迫力や躍動感は並々ならぬものがありました。どのページを開いても想像力をかき立てられるインパクトのある色彩が飛び込んできます。