「大笑い!東海道は日本晴れ!!」(横田順彌・清水義範・小佐田定雄)

東海道中膝栗毛」を下敷きにしたリレー小説です。第一走者は横田順彌、第二走者は清水義範、アンカーは落語作家の小佐田定雄、さらにイラストにはカールおじさんで有名なひこねのりおとものすごいメンバーを起用しています。それぞれの分野でトップレベルの作家がまじめにふざけてつくった作品なので、おもしろさは保証できます。
出版社によると作家間での打ち合わせは一切なかったとのこと。これだけの実績のあるメンバーでも、リレー小説となれば破綻なく終わらせることができるのかハラハラドキドキの綱渡り感も楽しませてもらえます。

横田順彌は第一走者ということで少し遠慮してしまったのか、あまり羽目を外さずに、田舎ものが知ったかぶりをして恥をかくという原典に忠実なギャグを展開しました。しかし、弥次喜多につきまとう謎の武士や子供を登場させ謎の暗号を持ち込み、原作をぶちこわす種は蒔いています。とりあえずわたしは「山のシャチ」さえ拝めれば満足です。横田順彌に比べると次の清水義範はだいぶ遊んでいます。第二章では水戸のご老公を登場させます。時代が違うなんて野暮なつっこみをいれてはいけません。その次は国境も飛び越え、武士道小説に耽溺するあまり自分が名だたる武将であるという妄想を持ってしまった壇喜八郎なるやっかいなご老体まで登場させてしまいます。さらには、弥次喜多アナクロニズムを意識したメタ発言をさせ、「高丘親王航海記」のようなノリも取り入れています。これで原作はいい具合にぶちこわされ、最終巻へのお膳立ては整いました。小佐田定雄はまず新キャラとして初代桂文治を投入してテコ入れをはかります。そして前の二人の残した伏線を回収し、第一走者が設定した「腹の底から笑えるようななにか」を探すというテーマをきれいにまとめました。