「秘密のマシン、アクイラ」(アンドリュー・ノリス)

秘密のマシン、アクイラ

秘密のマシン、アクイラ

劣等生のコンビ、ジェフとトムは体験学習中に迷い込んだ石切り場で空飛ぶ乗り物アクイラを発見します。ふたりは試行錯誤してアクイラの操作方法を探りますが、いろいろやっかいごとも起こしてしまいます。ステルスモードで暴走してしまったアクイラの位置を知るために苦手な速度計算をしたり、燃料が気になって物理の先生に質問にいったり、アクイラからホログラムで表示される文字がラテン語らしいことを突き止め、学校の図書室でラテン語の辞書を調べたりで大忙し。
この物語のもう一方の主人公は老練な教頭先生です。この教頭先生がいいキャラクターで、体験学習でふたりが迷子になったという報告を聞くと、ふたりは指示されたのと逆方向の石切り場に行ったに違いないと推理し、名探偵ぶりを発揮します。そしてふたりが発見されると、「いけにえの腹を裂くためのナイフを二本、それと、砥石をひとつ用意してもらいたいところだわ……」と穏やかでない発言をします。
この後この教頭先生に、ふたりが数学の勉強をしている、ラテン語の辞書を調べているなどというふだんのふたりからは考えられない奇行が次々と報告され、そのたびにあいつらは何かをたくらんでいるに違いないと職員室が騒然とするのがギャグのパターンになります。
ある意味子供と大人の幸福な関係性が描かれた作品だといえます。ジェフとトムは自分の好きなことをしているだけなのに、教員たちは勝手にふたりの行動に意味を読み取ろうとして、結局ふたりが特別な支援を必要をしている生徒であることを発見してそれにふさわしいな教育的指導を提案することになります。両者は徹底的にすれ違っていますが、不思議と利害は食い違っていません。