「コノヒトタチつっつくべからず」(シェル・シルヴァスタイン/作 川上弘美/訳)

コノヒトタチ つっつくべからず

コノヒトタチ つっつくべからず

シルヴァスタインの名前を聞くと、倉橋由美子の不在が思い出されてしまいます。彼の作品といえば倉橋訳でおなじみでしたからね。新しい訳者は川上弘美です。
たくさんの化け物が紹介されている絵本です。こういう本は化け物の名前をどう訳すかで訳者のセンスが試されるのですが、川上弘美ですからその辺は心配ありません。「テアシカオ」とか「ずんぐりどの」とか「ながいながい首のきてつな男の子」とか、名前をみただけで興味をそそられます。
化け物はどれも個性豊かです。たとえば一本足のバクのような姿の「イッポンアシ」の説明はこう。

イッポンアシには しんせつにしてあげて
気持ちを よおく考えてあげて
ダンスにさそったり しないであげて

こういう笑えるのもいれば、怖い化け物もいます。鋭い牙を持ちビルよりも巨大な「どうもうなアゲサゲ」なんかは、こいつにあったら絶対生き残れないと思えるような恐ろしい化け物です。ところが語り手の「ぼく」は、わりとあっさりこの化け物を撃退してしまいます。

そりゃあこわかったよ
でも勝ったんだ
どうやって?
いやなに こうやって ぱちん て
あかりをつければ いいだけなんだけどね

つまりこの本に登場する化け物は、子供がひとりで寝ているときに空想する化け物なわけですね。