「東京石器人戦争」(さねとうあきら)

東京石器人戦争 (復刻版理論社の大長編シリーズ)

東京石器人戦争 (復刻版理論社の大長編シリーズ)

1985年刊行。団地と駅の間にある天神の森に石器人の集団が出現する話です。
主人公の広志は、森の中で石器人がシカを狩っている場面を目撃します。翌日友人の信彦を伴って再度森に行くと、玄海と名乗る青年と出会いました。彼は考古学の研究をしている院生で、タイムトンネルを通って石器人が現れているのだという驚くべき説を披露します。広志らは石器人の集団との接触に成功し、玄海さんは彼らの仲間に入って森の中で生活するようになります。その後石器人が学校に現れたり、玄海さんが教授殺しの容疑をかけられたりして警察が介入し騒動が拡大していきます。
文明と非文明の衝突とともに、事実を改変、隠蔽しようとする力と、それにあらがおうとする者の戦いが描かれています。
警察は石器人コスプレをした頭のおかしい院生が教授を殺害し、森に立てこもっているというストーリーを作り上げ、石器人の存在は無視します。小学生の広志に対しても非人道的な尋問をし、捏造したストーリーに沿った証言を引き出そうとします。さらに、森の周りに柵をつくって見たくないものを隠してしまいます。
石器人側は、魔法で都市に木を生やして、壁をつくろうとする文明側に対抗します。都市に無軌道に木がボコボコ生えて森をつくる情景は、原初的なパワーが感じられて非常に鮮烈な印象を残します。
文明側は拡大する森の対処に困り、最終的には自衛隊機が森にナパーム弾を落とします。自衛隊による殺戮の描写は凄惨で、那須正幹の「The End of the World」や筒井康隆の「三丁目が戦争です」に匹敵するくらいのトラウマ度の高さになっています。