- 作者: 村山早紀,巣町ひろみ
- 出版社/メーカー: 童心社
- 発売日: 2010/03/01
- メディア: 文庫
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「願い事をするなら、いい願い事だけにしとくのよ。
ひとを呪ったり、恨んだりしてだめ。誰かの不幸を願ってはだめ。時が過ぎて、自分がその願い事を忘れた頃になって、願いがかなったりしたら、怖いでしょう?」
(p21)
「くるみの冒険」の第二弾。願い事を叶えてくれるという彗星カレイドスコープが17年ぶりに接近している頃、夜な夜な街に恐竜が現れるという噂が風早街で流れていました。その噂が「魔法」に関係する事件かどうかを探るために夜のパトロールにいそしむくるみは、小学校の先生が17年前に彗星にした願い事が事件に関わっているらしいことを突き止めます。
願い事をテーマにした作品なんですが、YA向けの「コンビニたそがれ堂」と小学生向けの「くるみの冒険」で、話の重さが全然変わらないところが村山早紀らしいです。本当に彼女は容赦のない人です。
ネットワークと非日常
この作品の特徴のひとつとして、小学生が携帯電話などのメディア機器を普通に使いこなしている様子が描かれていることが挙げられます。小学生たちは、チェーンメールめいた連絡網で、深夜に学校に潜り込むという計画を流します。
ここで、この作品の「魔法」に関するある設定が重要な意味を持ってきます。作品世界では、くるみが「魔法」に関わっているとき、彼女の携帯電話が「圏外」になる設定になっているのです。そのため、くるみがこの情報を知るのが遅れてしまい、事態が悪化することになります。
この設定からくるみは、「魔法」に関わる非日常の出来事を「圏外」と表現しています。逆にいえば、すでに現在の小学生にとって、携帯電話のネットワークでつながっている状態が日常であるということになります。
もはや児童文学の世界でも、携帯電話などのメディア機器は目新しいものではなくなったということを、この作品が宣言しているように感じられました。