「カプリの恋占い5 銀河のペアリング」(後藤みわこ)

カプリの恋占い 5 (フォア文庫)

カプリの恋占い 5 (フォア文庫)

「カプリの恋占い」最終巻。非常に美しいエンターテインメント作品でした。
小人のカプリを拾った少女絵麻と、同じく小人の王子を拾った少年みのるのすれ違いと邂逅が、作品の大きな流れになっています。すれ違い、記憶喪失、行方不明の父親、暗躍する複数の顔を持つ謎の人物と、読者の関心を引きつける素材が上手に料理されていて、誰が読んでも面白いウェルメイドなメロドラマに仕上がっていました。それでいて地底人というマニア受けするガジェットも仕込んでいるところも憎いです。
最終巻で読者は、四巻までで登場したパズルのピースがきれいにはまっていく様子をただぼけーっと眺めているだけでかまいません。地底世界アタルンデス、地下鉄黒須線、銀河牧場牛乳、全ての謎がそれしかありえないように見事に収束していきます。とうとう姿を現した地上と地底世界を繋ぐ回路はとてもささやかで、ささやかだからこそ胸を締め付けられるようにいとおしく感じられました。
作者はカプリと王子の再会の物語はきれいに閉じました。しかし残された子供たち、絵麻とみのると裏主人公の竹中美姫は成長の途上で佇ませています。でも、今まで彼女たちのひたむきさは十分に描かれているので、彼女たちの今後の幸福は約束されているとみてかまわないでしょう。子供たちの後日談を一切語らず潔く物語を閉じたことにより、幸福の約束はより強固になり、心地よい余韻を味わえます。
決して派手な作品ではありませんでしたが、心に残るシリーズでした。