「ちいさなボタン、プッチ 」(あさのますみ/文 荒井良二/絵)

ちいさなボタン、プッチ (おひさまのほん)

ちいさなボタン、プッチ (おひさまのほん)

花の形をした小さなボタンのプッチは、ちいさな女の子エリちゃんのスカートの縫い付けられます。エリちゃんと一緒に幸せな時間を過ごしていいたプッチ。しかしこの時間は永遠には続きませんでした。やがてエリちゃんが成長してスカートが小さくなった時、エリちゃんのお母さんは、スカートを「すてるよりほかない」と言いました。思いがけない言葉にショックを受けるプッチの運命やいかに……?
使われている言葉は奇をてらわず非常にシンプルで、プッチのエリちゃんに対する愛情や、ボタンとしての役割を果たせることに対する喜びがストレートに伝わってきます。
エリちゃんがプッチをボタン穴に通そうとする時、プッチは「せいいっぱい せのびをして」エリちゃんの手助けをします。こういうところ、命を持たないものを友達にすることができる子供の感覚をうまく捉えています。
絵は荒井良二。彼はプッチの幸福な気分を、「おひさまみたいなやさしいかおり」のエリちゃんを象徴する黄色を効果的に配置して表現しています。そして、プッチが暗い気分になったときは大胆に黒を使います。その黒と対比させることで、続いて登場する黄色がまたインパクトを持ってきます。色彩の切り替えで気分を視覚的に一目瞭然に表現しているのが面白いです。