- 作者: 梨屋アリエ,くまあやこ
- 出版社/メーカー: 岩崎書店
- 発売日: 2010/07/17
- メディア: 単行本
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誰も悪くないのに関係が悪化してしまう様子が実に冷酷に描き出されています。うまいなあと思ったのは、実月がクラスメイトの小テストでのカンニングを告発する場面です。机の中に資料が入っていたのを先生はうっかりミスとして流そうとしたので、カンニングが見えていたはずの位置にいた優由に意見を求めたところ、「見てない」と言われてしまいます。そのクラスメイトは学力が低く居残りの常習者だったのですが、その日は早く帰らなくてはならない事情がありました。優由はそのことを知っていたのでクラスメイトをかばう発言をしました。挙動からするに先生もおそらく見て見ぬふりをしていたものと思われます。優由と先生の行為は不正と言えば不正ですが、それなりの理由はありました。しかし、事情を知らない実月は優由に裏切られて自分だけが悪者にされたような気分になってしまいます。不正の告発という実月の行動にはまったく非難されるいわれはないというのに。この上なくいやらしい状況設定ではありませんか。
実月も優由も小学五年生で、そろそろ子供は同じ条件で育っているわけではないこと、いくら仲が良くてもそのうち進む道は分かれてしまうことなど、現実を認識しなくてはならない時期に来ています。そんな時期の、自分や周囲の状況が変化してしまうことへの恐れが繊細に描き出されています。ひとりでうんていにチャレンジしている下級生との交流を通して、変化への恐れはやがて希望に変わっていきます。
「雲のはしご」という名を持つうんていが恐れと希望のシンボルとして美しく描かれています。感動的な成長物語でした。