「市立第二中学校2年C組 10月19日月曜日」(椰月美智子)

市立第二中学校2年C組

市立第二中学校2年C組

どうということのない普通の公立中学のどうということのない平凡な一日が、2年C組の生徒ひとりひとりにスポットライトを当てる形式で語られるという趣向の、連作掌編集です。
中学二年生のどうということのない一日のなんと重苦しいことか。ある子にとってはこの日はおそらく保健室登校の1日目。ある生徒は性欲をもてあまして専門医の指導が必要なほどの状況になっている。ある生徒は遠足の班決めという一大鬱イベントに戦々恐々としている……。
この作品では、「語らないこと」による効果が最大限に活用されています。それぞれの生徒の問題が断片的にしか語られないからこそ、それが解決されずに今後も続いていくことに想像をめぐらせると、読者はその重さに耐えられなくなってしまいます。しかも、その重さはクラスの人数分で×38になっているのです。
さらに、4人だけスポットを当てない生徒を設定することで、読者が理解した気になることも拒絶しています。主役にならなかった4人は、理解不能の他者として読者の前に屹立します。