「シャッフル」(しんやひろゆき)

シャッフル

シャッフル

今年の児童文学表紙詐欺大賞はこれで決定ではないでしょうか。この表紙で中身が老人文学だと予想できる人はまずいないはずです。
タイトルから察しがつくように、入れ替わりもののお話です。飼い猫を含めて一家7人が入れ替わってしまったのだから、もうしっちゃかめっちゃかです。
問題は、語り手の雅和です。13歳の雅和は、72歳のおじいちゃんと入れ替わってしまいました。雅和の思考は老人の身体に引きずられてしまい、一日中ぼけーっと過ごす毎日を送ることになります。状況に対する危機感も全く持たず、残り寿命が急激に少なくなったことも意に介しません。最年少の赤んぼうは猫と入れ替わってしまったのでほっておくと大変なことになるのですが、それすらも気にせず、ケージから出して放し飼いにしてしまいます。
老人を他者とせず、老いを自分のものとして引き受けようと試みている、児童文学としては珍しい作品でした。