「レッツのふみだい」(ひこ・田中)

「レッツとネコさん」に続くレッツ・シリーズ第2作。前回は五歳のレッツが三歳の自分を振り返る話でしたが、今回は五歳のレッツが四歳の自分を振り返る話になっています。
四歳のレッツは背が小さくて洗面台の鏡に顔が映らないので、「ゴキブリさん」と名付けたふみだいを使っていました。名付けの理由は、両親がゴキブリ嫌いだから。それを踏みつけるとゴキブリをやっつけたみたいで両親が喜ぶだろうと善意から名付けたのに、なぜか両親は「ふみだいに 名まえをつけるのなんか やめなさい」と怒ります。
前回は幼児の言語の獲得がテーマでしたが、今回はふみだいが重要なアイテムになるということで、身体的な成長と視点の変化が大きなテーマになってきます。背が伸びて今まで見えなかったものが見えてきたり、ウインクなど新しい身体の使い方を覚えたりすることは、レッツにとって新鮮な驚きを伴う体験になりました。
ふみだいというアイテムは、レッツに未来の視点を与えるタイムマシンです。レッツはふみだいを使うことによってやがて自分の視点は変わってしまうことを先取りして知ってしまいます。未来を見通す視点を得ると、現在と過去に対する認識も変わってきます。今後ゴキブリさんがなくても見えるものは増えていきますが、それは同時にゴキブリさんから降りても見えなくなるものが増えることも意味します。つまり、今まで見えていたものが見えなくなってしまうということを、レッツは見通しているのです。レッツはそのことが嬉しいことなのかどうか考え込んでしまいます。
それにしてもレッツの両親、「すきな おともだち」にもほどがあるだろ。