「ハピ☆スタ編集部 やっぱりあたしが編集長!?」(梨屋アリエ)

やっぱりあたしが編集長!?―ハピ☆スタ編集部 (フォア文庫)

やっぱりあたしが編集長!?―ハピ☆スタ編集部 (フォア文庫)

「ハピ☆スタ編集部」シリーズ最終巻。この作品の成果は、最後までめんどくさがり屋の未来乃を精神的に変容させなかったところにあります。
人間の性格などそう簡単に変えられるものではありません。でも、人は変化できなくても、そのままの自分として生きていかなければなりません。では、未来乃のような壊滅的なダメ人間はどうやって世の中を渡っていけばいいのか。「ハピ☆スタ編集部」は、そんな切実な問いに答えようとしていた志の高いシリーズだったのかもしれません。
未来乃はシリーズを通して、スペックがあがるという形での成長はしていません。しかし、自分がもともと持っている能力や性質をやりくりすることで、うまく世間と折り合いを付ける方法を見つけることはできたようです。
強制的な形ではありましたが、いろいろな経験を積ませたことも大きなポイントです。未来乃のようなめんどくさがり屋は未経験のことをおそれてしまいがちですが、一回やってみればそれほど怖くないことがわかるのもよくあることです。こうした経験の積み重ねが、未来乃の生きがたさを軽減させました。
子供は常にいい子であることを強いられているので、実は未来乃のような性質を持っていてもなかなか表に出すことができません。そんな子にとってこのシリーズは、世間と折り合いを付けるためのヒントが得られるという意味で、非常に実用的な本となったのではないでしょうか。