『ちょっとした奇跡 晴れた日は図書館へいこう2』(緑川聖司)

ちょっとした奇跡―晴れた日は図書館へいこう〈2〉 (文学の散歩道)

ちょっとした奇跡―晴れた日は図書館へいこう〈2〉 (文学の散歩道)

緑川聖司の図書館ミステリ『晴れた日は図書館へいこう』の続編が、7年ぶりに刊行されました。
前作同様、図書館好きにアピールする謎の設定が巧みです。図書館内にこっそりドッグフードの缶詰が置かれる事件。風邪をひいて母親に図書館の本を借りてくるように頼んだところ、往復20分かかるはずなのにたった5分で本が届けられた事件。おばあさんから戦前に読んだ物語の探索を頼まれたら、同じ内容の作品が新刊として刊行されているのが見つかって、すわ盗作かと騒動が起こるという事件。ここまで面白そうな謎を設定されたら、物語の世界に引き込まれざるを得ません。
この作品には架空の本が多数登場するのですが、それがことごとく面白そうに見えるのもすごいです。本の内容自体に魅力があるのは当然として、紹介の仕方がうまい。作者の本に対する愛情のなせるわざだと思います。
ところで、佐藤友哉の近作『333のテッペン』で、「探偵はストーリーをまとめる」という探偵定義が披露されていますが、本作にも同じような思想が登場します。本作の探偵役は小説家なので、彼の仕事は推理ではなく、「物語を導き出す」ことであるとされています。児童書ミステリに「探偵」という存在に対する懐疑を持ち込もうとしているのが興味深いです。