「チームあかり」(吉野万理子)

チームあかり (新・創作)

チームあかり (新・創作)

東小卓球部の活躍を描いた「チーム」シリーズ第四作。今回の主人公は、第一作に登場した相馬ルリの妹ミチル。病弱で大会を欠場したこともある彼女ですが、キャプテンとしての責任感は強く、五年生の浦和陽子の才能を伸ばすことや、運動音痴の四年生葉菜の指導に必死に取り組んでいました。しかし、頑張りすぎて過労でぶっ倒れるというへたれっぷりを披露してしまいます。
このシリーズは一作ごとに個性的なキャプテンが登場しますが、その中でもミチルは異色です。彼女は自分が選手としては物足りないと冷静に判断して、一歩引いて指導者としての役割に徹します。そのため視点が選手より上になって戦い方も変わるので、前三作とは違った緊迫感が味わえます。敵役が憎たらしいこともあり、大会の盛り上がりはシリーズ中でも最高レベルになっています。
ところで、このシリーズの肝は歴史の蓄積です。ミチルの姉のルリが高校受験の準備でうんうんうなっている様子などを見ると、時のスピードの早さに愕然とさせられてしまいます。この巻では、第一作の主人公の大地やルリが中心となって、地域に卓球のクラブチームを作る動きもありました。登場人物たちの成長に伴い、作品世界もどんどん幅を広げているのが面白いです。