『ちあき電脳探偵社』(北森鴻)

ちあき電脳探偵社 (PHP文芸文庫)

ちあき電脳探偵社 (PHP文芸文庫)

1996年度の「小学三年生」に連載されていた北森鴻唯一のジュヴナイルミステリが、PHP文芸文庫から刊行されました。
バーチャルシステムを使い電脳世界を自在に操ることのできる美少女転校生鷹坂ちあきを探偵役とする連作短編です。小学校の前にある桜の木の枝が全て切られてしまった事件、学校の裏庭にある「あかずの倉庫」に幽霊が出現した事件など、ご町内レベルの身近な怪事件を鷹坂ちあきがあざやかに解決していきます。
態度のでかいライバルやダジャレの好きな先生などのキャラクターを立たせてシリーズものとしてわかりやすいパターンを確立し、テンポよく話を転がして、終盤でたたみかけるように合理的な解決をみせる手際のよさは見事としかいいようがありません。児童誌での連載という(主に分量面での)制約が多い環境で、読み物としてのおもしろさ、ミステリとしてのおもしろさが極限まで追求されています。
このような埋もれていた良作を発掘して本にした編集者の力量も評価されるべきでしょう。
この文庫版が売れたら、TAGROによる連載時のイラストも収録した児童書版もぜひ出してもらいたいです。