『名探偵VS.怪人幻影師 名探偵夢水清志郎の事件簿1』(はやみねかおる)

2009年に完結した『名探偵夢水清志郎事件ノート』が第二期『名探偵夢水清志郎の事件簿』として、キャラクターや舞台を一新して約2年ぶりに再スタートしました。
第二期は「赤い夢」への原点回帰を目指しているようです。舞台となるのは50年前の日本の町を再現した「レトロシティ」という町なのですが、この町が作られた理由がすごい。町を作った兵藤という老人は、「むかしの希望にあふれた時代を思い出してほしい」からレトロシティを作ったのだと話します。でも、はやみねかおるは「昔は良かった」などという幻想を持っているような作家ではありません。これは表向きの理由で、真の理由は昔の闇を復活させて、古いミステリに登場するような怪人を人工的に作り出そうというものでした。つまり、はやみねかおるは猟奇的な犯罪が見たいという作者と読者の欲望の代行者として兵藤氏を設定しているのです。彼はミステリファンの暗い欲望を隠そうとしていません。
新たな登場人物にも注目されます。亜衣真衣美衣の三つ子に代わって夢水清志郎と行動を共にするのは、やはり三人の少女です。小栗虫太郎を愛するミステリマニアの小学6年生宮里伊緒とその妹美緒。人気子役として活躍する美少女ながら、○○志願という困った将来の夢を持っている中島ルイ。積極的に事件に首を突っ込んでいきそうな設定がなされているので、活躍が期待されます。