『怪盗パピヨンsteal1 雨小ミステリークラブ、誕生!』(関田涙)

怪盗とか怪人が子供に人気がある理由は、やつらが子供と本気になって遊んでくれるような大人になりきれない大人だからなのではないかと思います。日本を代表する怪盗である二十面相なんかも、夜の闇の魅力を感じさせてくれる一方で、ものすごく大人げない面も見せてくれました。
では、そういった怪盗や怪人は子供とどういう距離にあるのがいいのか。この作品の怪盗のように、子供に一番身近な他人などはなかなかいい位置にいるのではないでしょうか。
推理小説が大好きで探偵志望の奈那と、事件記者志望の巧太。小学5年生ふたりが結成した雨小ミステリークラブが狙うのは、ちまたを騒がせている女怪盗パピヨン。博物館や美術館を華麗に襲撃する彼女ですが、実はかわいそうな秘密をもっていて、第一巻にしてその秘密を奈那に知られてしまいます。
パピヨンを付け狙う探偵マスクド・ドラグーンも愉快なキャラクターです。必要のない仮面をかぶって、さらに角まで付けるという超絶ファッションセンスが目を引きます。
登場する大人に隙が多くて憎めないところが、本作の魅力になりそうです。
もちろん関田涙ですから、ミステリとしてのおもしろさも折り紙付きです。妄想が大爆走する奈那の推理は必見です。
それにしても、目次の登場人物紹介の欄で本文を読む前から怪盗の正体が丸わかりな仕様には驚きました。