『少年の日々』(丘修三)

少年の日々 (偕成社の創作)

少年の日々 (偕成社の創作)

少年の日々 (偕成社文庫)

少年の日々 (偕成社文庫)

1992年に刊行された丘修三のリアリズム短編集。『少年の日々』が偕成社文庫になりました。この作品集の肝は、子供の悪を描き出している点です。
『ユキ彦』は、同調圧力は容易に人を殺してしまうという話です。
川岸にある大きな柳の枝によじのぼって、そこから川に飛び込むという遊びをしている少年たちが、何をやらせてもぱっとせず飛び込みもできないユキ彦という少年を責め立てます。ユキ彦はひとりで飛び込みの練習をして事故死してしまいます。
『女郎ぐも』は、勝手に女に幻想を抱いていた少年が幻想を裏切られて、心にミソジニーを宿す瞬間を切り取った作品です。少年たちがクモを捕まえて戦わせている時に、密かに憧れていた近所のお姉さんが現れて観戦を始めるのですが、彼女がものすごいテンションで「やれ!そら、やっつけろ!」と応援したものだから、男子たちはみんな毒気を抜かれて白々とした気分になってしまいます。
クモの生態描写は緻密で迫力があります。しかしそれを、ミソジニーを描くためだけに惜しげもなく奉仕させているのが贅沢です。