『きみに出会うとき』(レベッカ・ステッド)

きみに出会うとき

きみに出会うとき

2010年のニューベリー賞を受賞したタイムトラベルSFです。
ミランダの母親に高額の賞金が当たるテレビ番組の出場権獲得を告げるはがきが来る場面から、物語は始まります。でもその出来事は、ミランダの元に送られてくる謎のメモに予言されていました。はたしてそのメモは誰がどこから寄越したものなのか……?
慣れというのはやっかいなもので、時間SFを読み慣れていると、結果が原因に先立つというふしぎな出来事も当たり前のように感じるようになってしまいます。その点この作品は工夫されていて、作中人物に準古典の児童書SF『五次元世界のぼうけん』の謎について語らせることで、タイムトラベルのふしぎさを読者にあらためて認識させ、新鮮な驚きを持って作品世界の謎を楽しめるようにしています。
SFとしてだけでなく、YAとしてもよくできています。友人間のいざこざや差別問題も絡めながら、身近な人間に対する見方が変化していく様子が丁寧に描かれています。
ニューベリー賞の受賞も納得の良作でした。