『チームみらい』(吉野万理子)

チームみらい (新・創作)

チームみらい (新・創作)

「チーム」シリーズ最終巻です。好きなシリーズだっただけに、これで終わりにされるのは納得がいきません。
卓球のクラブチームができたのはいいのですが、まさか今までの舞台であった小学校の卓球部が完全に捨てられてしまうとは思いませんでした。今巻の主人公、1巻の主人公の浦和大地の妹陽子は、クラブチームに専念するために卓球部を辞めてしまいます。これでシリーズのつながりは切断されてしまいました。
勝利至上主義者の浦和陽子を主人公にしたのが失敗の元でした。そのせいで、今までのシリーズにあったはずの大切なものがたくさん切り捨てられてしまうことになります。
勝利至上主義によって、競技の実力がいまいちな登場人物の扱いはひどいものになっています。2巻の主人公の純は、3巻の主人公の広海と4巻の主人公のミチルのふたりの面倒をみた大きな功績があるのに、全くスポットライトが当たりません。ミチルに至っては、敵の弱点を発見する技能しか期待されていません。もはや便利アイテム扱いです。前巻でミチルの相棒だった葉菜も、どこでなにをしているのやら。
複数主人公のスポーツ児童文学としては、森絵都の『DIVE!!』という偉大な先例があります。これはキャラの立て方が非常にうまい作品でした。『DIVE!!』と比べるのは酷ですが、『チームみらい』には読者のキャラへの思い入れに対する配慮が全然足りません。