『ようこそ、古城ホテルへ』(紅玉いづき)

古城ホテル『マルグリット』の女主人候補として、4人の少女が招かれます。魔山から追放された落ちこぼれ魔女のピィ、元軍人のジゼット、亡国の姫君リ・ルゥ、正体不明の少女フェノン。この中から女主人として選ばれるのはたったひとり。
電撃文庫でのデビュー当初から「児童文学っぽい」と言われ続けてきた著者なので、つばさ文庫に来ることを予想していた人は多いでしょう。なぜ彼女の作品がそういう評価を受けるのかを分析すれば、児童文学がどうみられているのか(どういう偏見を持たれているのか)が検証できそうですが、それは詳しい人に任せます。
孤児が居場所を求めて奮闘する話であると読み解けば、この作品は確かに正統派の児童文学っぽくみえます。ただし、登場する少女たちは孤児というより失職者という方が正確です。現代の世知辛さが反映されています。
報われるのはひとりだけというのがゼロ年代的ですが、バトルロワイヤル状況はそれを否定するために設定されるというのもまたお約束です。
居場所を得るために手段を選ばず戦う少女たちの姿はすがすがしく、心地よい読後感をのこします。